「実例刑事訴訟法Ⅱ公訴の提起・公判」:法律書レビュー
「実例刑事訴訟法Ⅱ公訴の提起・公判」(松尾浩也、岩瀬徹編)を読み終わりました。
きっかけは、66期司法修習生から二回試験でどのような訴訟指揮をすべきかといった問題が出題されることがあり、そのための対策としておすすめされたからです。また、以前は新実例刑事訴訟法として1998年に刊行されていたものが、2012年10月に改訂版として本書になったと聞き、今買っても改訂等で陳腐化しないだろうと考えたからです。
メモも兼ねて本書のレビューをまとめます。
全体構成・目次
実例刑事訴訟法Ⅰからの連番になっているため第2章から第4章までが本書の範囲です。
・第2章:公訴の提起
・第3章:公判準備
・第4章:公判期日
公訴提起から公判までの論点がまとめられています。「実例刑事訴訟法Ⅰ捜査」「実例刑事訴訟法Ⅲ証拠・裁判・上訴」や旧版の新実例刑事訴訟法は未読ですが、本書だけ読んでも内容がきちんと理解できました。
公判前整理手続・裁判員裁判等の変化を受けての解釈を解説
全体として、公判前整理手続・裁判員裁判を意識して刑事訴訟法の解釈・運用にどのような変化があるかという点に着目した記述がされていました。旧版以降で、公判前整理手続、証拠開示、被疑者国選弁護、裁判員裁判、被害者保護、被害者参加といった刑事訴訟法に大きな変化があり、それを踏まえた解説となっています。
これら手続を理解するうえで非常に有益な事例設問が冒頭に紹介され、これを解説するという形で本書は進んでいきます。公判前整理手続・裁判員裁判による刑事訴訟法解釈の変化は本書全体を通じて解説がされ、これら手続の理解が本当に深まりました。
おすすめ度、対象者
新実例刑事訴訟法時代から司法試験の種本になっていると噂で聞いたことがありましたが、一方では司法試験レベルを超えているとも聞いていました。受験生当時は読んだことありませんでしたが、確かに司法試験の勉強として読んでも有益な本だと感じました。また、解説が詳しく独学で読める本だと思いました。確かに、司法試験では問いにくいだろうなという難解な実務的論点もありますが、考え方等は司法試験受験生でも知っておいて有益な内容のように感じました。
ただ、刑事訴訟法でしっかりとした答案がかけるようになっていない段階の方は、もう少し基本的な演習書が適切だと感じました。司法試験受験生・予備試験受験生が読むとすれば刑事訴訟法の学習がある程度の段階まで進んでいる方向きです(ある程度のレベルに至っていてさらに得意にしたいという方には本当におすすめ)。
二回試験で訴訟指揮に関する問題が出題されるとすれば、公判前整理手続・裁判員裁判等の理解を深めておくことが重要だと思います。本書全体を通してそのような観点で解説がされているので修習準備をされている方や二回試験の勉強をする方にはやはり適した内容なのだろうと思いました。
新実例刑訴から実例刑訴まで改訂に10年以上もかかったことや、2012年12月に発刊されたことを考えると新版がすぐに出るリスクは低いので、買ってしまってもよい本だろうなと思います。内容は本当によかったので、もう一度読むことになりそうです。
- 作者: 松尾浩也,岩瀬徹
- 出版社/メーカー: 青林書院
- 発売日: 2012/10/01
- メディア: 単行本
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